2009-01-01から1年間の記事一覧

上野公園

藤原定家、その父、藤原俊成の真筆が展示されているという、冷泉家展に行ったのは、寒気団が強烈に攻めて来ている時だった。それでも、展覧会場は人の波で熱気に満ちていた。 ギュウギュウで、背中越しから、何とか、国宝や重要文化財の筆跡を覗き見る。 で…

たぬき

伯父さんのお墓は、秩父の山が近くに見えるような場所にある。 そのお墓に一周忌のお参りに行った。道中は秋景色。 丘陵を貫く欅の並木道が、黄色やオレンジに色付き、陽に輝いていた。 田んぼは稲刈りが終って、稲株の跡がすらっと何本もの直線を描いていた…

犬を洗う

「おふろ」という言葉は、うちでは禁句である。 「おふろ」と聞くや、狛犬のコマちゃんの耳はピンと立ち、喜んで飛び付いてくるのだ。 「お風呂に入ろうかな」とか「お風呂の掃除しなくちゃ」と独り言を言っているだけで、彼女がばーっと飛んできて、喜びの…

小菅拘置所、坂口弘歌稿 (2)

*わが胸にリンチに死にし友らいて雪折れの枝叫び居るなり 1993年 朝日新聞社刊行の「坂口弘 歌稿」の最初のページに出ていた短歌。 ガーン。 ショックだった。さらに、 *床下に縛りし彼女も死にゆきぬ重石に拉がれ(ひしがれ)吾声も出ず 息が苦しくなるよ…

小菅拘置所、坂口弘歌稿 (1)

小菅の拘置所へ行って来ました。 それで、ブログの間隔が空いてしまった・・。 いえ、まぁ、、中に入っていたという訳ではありません。 散歩です、散歩。もしかすると、自分が書いている物に必要かもしれない、という漠然とした思いから、行ってみたのです。…

ゴーヤー、爆発す

八月がまさに終ろうとするある朝のことだった。 ベランダのカーテンを開けて、私は「ああーっ」と声を上げた。 そこに、惨劇が起こっていたのだ。血痕! ベランダの床の上に、赤いべトッとしたものが飛び散っている。 頭の中が数秒間、混乱した。 それから上…

大洗海岸

どうしても海が見たいと思い立ったのは、お昼少し前の時間だった。 それも、太平洋、どうしても太平洋でないと、思った。で、地図を眺めて、大洗海岸へ行こうと決めた。 なぜなら、鹿島灘に沿った、国道51号腺に心魅かれたからだ。 ほとんど直線に見える、…

イノダコーヒー

生粋の関東人である私は、イノダコーヒーという名前を知らず。 東京駅の大丸デパートにそのお店が入っているから、行ってごらん、と言われ、出かけてみたのでした。 ただし、コーヒーは濃くて、お砂糖を入れて飲むのが、そのお店の「ルール」とまでは行かな…

ラクリメ  眠りの音楽

ダウランドのラクリメ。このCDを買いに走ったのは、村上春樹の『1Q84』を読んでいる途中のこと。 この本の上巻の383ページに出てくる音楽が、ダウランドのラクリメだった。 これが中世の音楽であることは、小説の中から判り、そのシーンの描写から…

緑のカーテン

東側のベランダからの朝の陽射しが、夏になるととても暑いので今年は緑のカーテンを作ろうと決心した。 地球温暖化対策として、小学校などの窓辺にゴーヤーの緑のカーテンを作っているというニュースを見たからだ。ゴーヤーの種を蒔いたのが6月の半ばだった…

髪を切りに

伸びてきた前髪をゴムで結わえて、ヤワラちゃんヘアにしていたけれど、蒸し暑い日々、それも耐え難くなったので髪を切りに行った。ずっと前から行きつけの私の美容院。 とても変わった名前の私の美容院・・。I am crazy about strawberry. などという、be cr…

運河を二度渡って

西の空に三日月がぼんやりと出ている。 梅雨の夜、遅くなってから雨がようやく止んだ。 まもなく21時になろうとしている道路は空いていて、運転は快適だ。 車のMDプレイヤーから、お気に入りの、吉田日出子の「もっと泣いてよフラッパー」が流れてている…

やさしい建物

ずっと長いこと、メンソレータムの箱に「近江兄弟社」と書いてあるのが気になっていた。 近江兄弟社・・・。 なんと不思議な会社名だろう。 いつも、缶の蓋を開けると、ハッカの匂いがツンとするあの薬を塗るたびに考えていた。 これは、兄弟が始めた会社で…

金魚の死

ああっ! ショック! ベランダに置いた瀬戸物の睡蓮鉢の陰に、金魚のサブローが死んでいる! 自殺、としか思えない。 ここはマンションの高層にあるベランダだから、猫なんて来ない。 カラスも、物干棹あたりまではごくたまに飛んで来ることはあっても、我が…

ジョン・レノンの眼鏡(2)

店の表の扉が開いて入ってきたのは、元気なオバサンだった。 「すみませーん、お待たせしちゃって! 携帯電話の音が聞こえなかったんですよ〜」 と、手に持った電話を振り回すようなしぐさをした。 なんか、こう、ヒマワリみたいオバサンだな、と思った。「あ…

ジョン・レノンの眼鏡(1)

神田神保町の靖国通り沿いの古本屋街にちょっと不思議な眼鏡店がある。 戦後すぐに建てられたと思しき、二階に大きな丸窓のある家が7,8軒並んだ名物長屋。 それが次々に歯を抜くようにビルに建て替えられてしまう中、その眼鏡店と、隣の店だけが、かろう…

追悼

『・・・・・・・・・・ 花びらが散る散る散る前の 謎めいて沁みる冷たい空気 花びらが匂う匂う匂う夜は この胸を浸す憂えに沈む 立っているのはひとり 暗い海を見降ろす丘の上 ・・・・・・・・・・ 』 2006年に発売された、忌野清志郎のアルバム「夢助」の…

四月の短歌 「春愁」

毎月、数首、ささやかな歌を詠んでいます。今月は「春愁」という題で五首。 * * * 満開の桜の下は鎮まりて 棺の車土手に沿い行く 光り溜め白き桜は照り映えて 生死のあわいにゆらめきて立つ 亡き人とは同級生と火夫は言い 小箒動かし白き骨寄せる 葉桜に…

白滝ダイエット

チワワの定義らしきものには、体重3キロ以内が理想、とあるのだ。 我が狛犬は、このところ5キロを突破している。 姉が一年ぶりで、我が狛犬に再会した時、 「まぁ、可愛い! コロコロになっちゃって。鼻の周りを黒くすればパグね」 などという暴言を吐いた…

同級生

人生はすべて、慣れなんだろうなぁ、と思う。子供の頃、火葬場はこの世の果ての恐怖の場所だった。 火葬場の煙突が見えるだけで怖かった。 あれが、火葬場の煙突だ、と認識しないように、視界からさりげなく消していた。桜の満開の日に亡くなった人を見送る…

桜の下

桜の木の下には・・、と書いたのは坂口安吾だった気がする。 今週、桜が満開の日に、親しい人が亡くなった。 二年前にも、満開の桜が散り始めて、花吹雪の中で母の葬儀があった。たしかに、満開の桜の、光を吸い込んで膨張するようなあの白は、なにか生命の…

花冷え

九段に用事があったので、その帰りに靖国神社へ寄ってみた。 二分咲きの桜の花の下を、震えて歩いた。 薄着で来たこと、後悔しきり。しかし偶然、靖国神社の境内に、山車が二台、繰出すのに出くわした。 冷え冷えとして、桜もまだだったので、山車の運びは今…

クスリと歯磨き

最初はたいてい、ニンゲンがやっていることを、ちょっとお裾分け、という軽い気分。 それがきっかけなのだ。 いつもじっと、私の動きや、やる事なす事を、じっと大きな目で見つめているので。朝のコーヒーの後に私が何錠かのクスリやサプリメントを飲んでい…

パソコン指

だいぶ前から指の関節が痛くなり始めて、この頃は、親指がバネ指になり、両方の手首の関節も激しく痛むようになってしまった。仕方がないので整形外科に行く事にした。 指の腱鞘炎という診断。 予想通りではあった。 やはりパソコンによるもので、最近、多く…

不思議な雲

今日は春分の日。 昨日は3月だというのに夏のような気温だった。 そのせいか、今日の午後、空には不思議な雲が出ていた。それは、モクモクと湧き出す夏の入道雲に良く似ていたけれど、とても低い位置に広がっていた。 大きな川にかかる橋を、車で渡っている…

自力給油

東の空に低く出ていた満月が、少し上空に登るにつれてぼんやりと傘を被ったようになってきた。 雨が近づいているのかも、と思いながら、車のハンドルを左に切って、ガソリンスタンドに入った。夜8時半。私は仕事その他の一日の義務を終え、音楽をかけながら…

ミモザの花

白や薄紅色の梅が満開になって、やはり梅は枝ぶりの美しさなんだな、とあらためて思って見たりしているこの頃。そんな中で、鮮やかな黄色の花がボンボンのような房になって、緑の葉の中から湧き出している木が、目を引いた。 あ、きれい! 日本古来の花の色…

狛犬の朝食

今朝は久しぶりに晴れた朝。 三月の第一週は、雪や大雨の合間に、ほんの一日くらいの晴れがあるだけだった。 これだけ降水量が多ければ、木の芽や花の蕾もふくらむだろうな。コマちゃんは、毎朝、カフェオレと犬用のビスケットを食べる。 カフェオレもインス…

睡魔をさそう唄

昨日は雪が降ったけれど、積もらなかった。 朝、寝床で耳を澄ませた。 雪なのか、雨なのか、それとも曇りなのか。 どうやら雪ではなさそうな感じがした。 雪の日は、音が吸い込まれているけれど、何か雪の気配がするものだ。先週はいろいろあって疲れてしま…

犬相撲

コマちゃんが拾われたばかりの頃、じゃれて手に噛み付くのに閉口して、ホームセンターで工事用皮手袋を買い求め、それをはめて相手をしてやった。それからと言うもの、遊んでほしいとその手袋を咥えて来る。 それも必ず、左手用ばかり。(右利きの人間は、右…